2007年4月9日月曜日

CSR存亡の危機?

企業の公益活動には,CSRの他に,企業財団(公益法人)による公益活動がある。三菱財団やトヨタ財団などが今も頑張っている。

この公益法人には,企業財団の他にも官製の公益法人もある。これらの公益法人への天下りが最近ニュースに取り上げられる機会が多い。
その結果,公益を隠れ蓑にして私腹を肥やす人たちが牛耳っている法人のようなイメージが広がり,「公益財団=悪」のようなイメージが広がっている。 

天下り規制が強化される一方で,公益法人への天下りが規制の対象から外れると,企業財団を使った天下りが拡大する恐れもある。建設業界団体が,どこかの公益財団に寄付をして,その財団に役人が天下る構図である。

こうなると,CSRを含む企業の公益活動全体が不信の目で見られ,社会的認知と信頼を失う。CSR活動の危機である。
公益法人への天下りが規制の行方によっては,CSR活動の基礎が脅かされることになりかねない。

2007年4月6日金曜日

金融のグリーン化

環境省が,「環境報告ガイドライン07年度版」に「金融のグリーン化」の項目を追加する。「金融のグリーン化」が記載されたCSRレポートや環境報告書が増えるかもしれない。
「金融のグリーン化」とは,環境に優しい企業ほど金融面で優遇される仕組みだそうだ。拡大解釈すれば,CSRの取組に熱心な企業は,金融面で優遇される仕組みとも言えそうだ。
SRIファンドの存在により,資本市場からの資金調達がCSRによって有利になる状況を既に作り出している。このような「金融のグリーン化」を促進するために,環境省は「金融のグリーン化事業」として約2,000万円を予算化してもいる。

「CSRに励めば御利益がありますので,精進してください。」と政府が言うことには違和感がある。政府は,社会に対する極めて重い責任を負っているので,まずは政府自らが社会に対する責任を果たすべきだと思う。
政府の手抜きを民間がCSR活動でカバーする構図は,許されない。政府は政府として,企業は企業として各々が社会的責任を果たさなくてはいけない。相手に頼り,自分はサボろうとしているなら,論外だ。

2007年4月5日木曜日

地元企業による地元のための地元での活動?

横浜市が「地域貢献企業」を支援するという。
地域・社会に貢献する企業を「地域貢献企業」として認定、資金面や経営面など、さまざまな面から企業の支援を行うらしい。

「社会貢献」という言葉の「社会」とは何だろう。
地域社会や国際社会を連想する人など様々だろう。その範囲も、隣近所や町内、あるいは市町村全域、人によっては県全体や国全体、それを超えて世界全体を連想する人もいるでしょう。
個々の企業が行う社会貢献活動の範囲にどの程度の広がりがあるのかは、その企業の視野の広さを物語っているように思います。隣近所だけを考える企業から外国のことまで考える企業まで様々です。
企業の社会貢献を狭い地域に誘導し、視野を狭めてしまうような行政の活動は賞賛しにくい活動です。地元が潤えばそれで良いという地域エゴのようにも見えます。
自分だけ良ければそれで良いという企業エゴに対する反省からCSRは生まれたはずです。CSRが地元企業による地元のための地元での活動になってしまわないようにしたいものです。

2007年3月27日火曜日

割り箸は,環境破壊につながる?

割り箸の使用は,原料となる木材の伐採により森林破壊につながる恐れがある。
しかし,原料に間伐材や端材を使えば,人工林の荒廃を防ぎ森林保全につながる可能性もある。
「ナチュラルローソン」の割り箸は,国産杉の端材を使用しているため環境保全に役立つ割り箸だそうだ。しかし,割り箸を見ただけでは,間伐材を使った自然に優しい割り箸なのかどうかが判らない。
エコマーク入りの割り箸の販売をCSRの一環として行う企業がないのだろうか。

広がるCSR調達

CSR調達では,仕入れ先に「法令順守」、「環境への配慮」、「人権尊重」、「地域貢献」、「特定の化学物質は不使用」、「児童労働の排除」などを求めるCSR調達が広がり始めている。
松下電器産業は,3月末までに中国の部品・資材調達先4200社とCSR調達の契約を結び,2008年中ごろを目処に世界9000社と契約を結ぶ予定。
米IBM、ソニー、蘭フィリップスなど日米欧の電機・IT大手22社は2007年夏をメドに、部品・部材の調達で企業のCSRを重視した統一基準の運用を始める。
富士ゼロックスは約700項目について調達先に順守状況を報告するよう求める。
河にも大気にも汚染物質をまき散らし,子供であろうとなかろうと安い給料で人を雇い,劣悪な労働環境を働かせ,病気や怪我で働けなくなれば使い捨て,なりふり構わずとにかく安く製品を供給するようなビジネススタイルが,通用しなくなることを切に望む。

2007年3月26日月曜日

CSRを知っている人は3割

28.7%:「CSRの意味を理解している」
35.0%:「言葉は知っているが内容は知らない」
11.0%:「CSRには特に意味はない」
これは,楽天リサーチと日本総合研究所が,20歳代の会社員や就職活動中の学生を対象にアンケート調査した結果(を3月22日発表)だ。
この数字を見て,CSRは、マイナーだと見るべきか理解が広まってきたと見るべきなのだろうか。

2007年3月8日木曜日

買春とCSR

カンボジアで18才の少女にわいせつ行為をして、その画像を日本に持ち帰ってホームページに掲載していた男に有罪判決が出た。
裁判官は,「国の恥というべき犯罪だ」として、懲役三年を言い渡した。
買春をしている人でなしは,断罪されて当然だ。しかし,「国の恥」という部分が気になる。「国の恥」という言葉からは,「外聞が悪い」といニュアンスを感じる。
少女がカンボジア人だったから「国の恥」として重く罰しただろうが,少女が日本人だったらどうだったのだろうか。
少女の国籍に関係なく,買春は罪だ。人間の尊厳を踏みにじる忌むべき罪だ。
そのことを理解しているのだろうか。

買春も是とするような日本の文化風土を改善するようなCSR活動に,旅行業界が取り組んでいる。その結果が,「子ども買春防止のための旅行・観光業界行動倫理規範(Code of Conduct)」
となっている。JTBなどの81社と2団体がコードプロジェクトに参加して,買春に取り組んでいる。

買春をCSR活動で取り上げるのには,勇気が必要だったことだろう。当たり障りの無い慈善事業ではなく,こういう根源的な問題に取り組むことにこそ価値があると思う。

2007年3月4日日曜日

消費者が支えるCSR

日本ビクターは、社会貢献活動として、1980年から「UEFAヨーロッパサッカー選手権」オフィシャルパートナーとして20年以上にわたって大会をサポート。1984年からJVCジャズフェスティバルを開催、1978年から東京ビデオフェスティバルを主催するなどの活動を行っています。住信のSRIファンドに組み入れられてもいます。

この日本ビクターが業績不振です。2006年度の決算は、資産売却で赤字を逃れるものの、本業は10億円の赤字の見込み。親会社の松下電器産業は、日本ビクターを売却する予定です。

社会貢献をやっていても、企業は存続できません。本業で、利益をあげることがサステイナビリティ確保の必須条件です。CSRでは会社を救えません。
CSRを金持ち企業の道楽にしてしまわないためには、消費者がCSRに感心をもつことが必須です。CSRでは会社を救えないが、CSRに取り組まないと物が売れないという状況にならないとCSRはコンプライアンス止まりになってしまいます。

2007年3月3日土曜日

アキバ系のメセナは?

日本政府が推進する「ビジット・ジャパン」キャンペーンでは、外国人観光客向けにに日本のアニメや漫画のサブカルチャーの中心地である東京の秋葉原の無料ツアーを提供している。
このツアーでは、ドイツ人・インド人・アメリカ人などの海外からの旅行者が、ガイドの先導で秋葉原の裏道にあるアニメのキャラクターのフィギュアやコスチュームの専門店などを訪ねる。
観光客の多くは、オタク的なこだわりを格好のいいことととらえているそうだ。
政府がオタク文化を日本の売りにしているくらいなのだから、企業がコミケのサポートなどをメセナとしてCSRの一環で実施したら好感する層もあるかもしれない。しかし、冒険だろう。
文化活動の支援も、支援対象の選定が難しい。

2007年2月28日水曜日

CSR型株主優待

投資家が株を買いたい理由は利殖だろう。
利殖以外に、社会に貢献するという付加価値を付けているのがワタミだ。ワタミの株主優待券を、ワタミに返却すると優待券1枚につき300円がNPO法人「スクール・エイド・ジャパン」へ寄付される。
これは、株を買ってもらうための Cause Related Marketing だ。自社商品の販売促進にCRMを使うのではなく、自社株の株価上昇のためにCRMを使っている例は他に知らない。
ワタミにとっては、新たな活動原資無しで社会貢献活動ができ、企業イメージが向上するメリットがある。株を買う人は、社会に貢献したという満足感が得られる。NPOは活動資金が手に入る。カンボジアやネパールには学校が建つ。みんながハッピーになれる。